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2025年1月29日

「教会の伝道物語を黙想する2~一人が加わって、主の復活の証人となる~」

使徒言行録1章12~26節

井ノ川勝

1.使徒たちは上の部屋に上がり、熱心に祈っていた

(1)使徒言行録は教会誕生の物語です。2章で、聖霊が降り教会が誕生した出来事が語られます。しかし、ルウカは聖霊降臨の出来事から語り始めません。教会が誕生するまでの備えの時があったことを、1章で丁寧に語っています。その意味で1章はとても大切なことが語られています。教会誕生までのなすべきこと。一つは甦られた主イエスが40日間、弟子たちと交わりを持たれ、御言葉によって弟子訓練をされたことです。もう一つは、ユダが欠けた11人の主イエスの弟子に、もう一人を加えて、12人の弟子として整える必要がありました。教会の中核となる使徒たちです。「使徒」とは甦られた主イエスと出会い、伝道に遣わされた者たちです。

 

(2)今日の御言葉はこういう言葉から始まりました。12節「使徒たちは、『オリーブ畑』と呼ばれる山からエルサレムに戻って来た。この山はエリサレムに近く、安息日にも歩くことが許される距離の所にある」。「オリーブ畑」と呼ばれる山とは、甦られた主イエスが弟子たちに現れ、天に上げられた場所です。ルカ福音書24章50節では「ベタニア」と語っています。エレサレムの近郊で、安息日の規定で歩くことが許される距離にあります。13節「彼らは都に入ると、泊まっていた家の上の部屋に上がった」。「泊まっていた家の上の部屋」とは、主イエスと最後の晩餐をした部屋です。「上の部屋」は英語で「アパールーム」と言います。英語の一日一章の小冊子に『アパールーム』があります。ここから取られた名です。

 家の上の部屋に上がったのは、ペトロ、ヨハネ、ヤコブ、アンデレ、フィリポ、トマス、バルトロマイ、マタイ、アルファイの子ヤコブ、熱心党のシモン、ヤコブの子ユダでした。主イエスの11人弟子たちです。14節「彼らは皆、婦人たちやイエスの母マリア、またイエスの兄弟たちと心を合わせて熱心に祈っていた」。主イエスが天に上げられた後、主イエスの弟子たちの拠点となった場所は、エルサレムの最後の晩餐の2階の部屋でした。その部屋で熱心に祈っていました。何を祈っていたのでしょうか。主イエスが天に上げられる直前に語られた言葉があります。8節「あなたがたの上に聖霊が降ると、あなたがたは力を受ける」。主イエスの約束の言葉を信じ、聖霊降臨を待ち望みながら、熱心に祈っていました。「熱心に」は「たゆまず」という意味です。

 注目すべきは、弟子たちが集まって熱心に祈っていただけでは、教会は誕生していないのです。祈っていた主の弟子たちに聖霊が降ることにより、教会が誕生したのです。教会誕生は人間の業ではなく、神の御業です。

 

2.呪いのアッケダマ・血の土地から祝福されたアッケダマ・血の土地へ

(1)15節「そのころ、ペトロは兄弟たちの中に立って言った。120人ほどの人々が一つになっていた」。2階の部屋で祈っていたのは120人程でした。一つになって祈っていました。一つの祈りの群れを「イエスの兄弟たち」と呼んでいます。主イエスに結ばれた者たちを「兄弟姉妹」と呼び合っています。今日の教会の原形があります。注目すべきは「120人」という数です。神の民はイスラエル12部族の連合体です。主イエスの弟子は12人で、新しいイスラエルと呼ばれました。12は共同体が成り立つ数です。120人が教会誕生の共同体の数となりました。

 16節以下は聖霊降臨前、教会誕生前のペトロの説教です。使徒言行録は今日の教会の土台となる説教が数多く語られています。「兄弟たち、イエスを捕らえた者たちの手引きをしたあのユダについては、聖霊がダビデの口を通して預言しています。この聖書の言葉は、実現しなければならなかったのです」。ユダの裏切り、末路を預言したダビデの口を通して語られた聖書とは、具体的にどの御言葉でしょうか。20節で引用されています。詩編69:26「彼らの宿営は荒れ果て、天幕に住む者がなくなりますように」。詩編109:8「彼の生涯は短くされ、地位は他人に取り上げられ」。

 17節「ユダはわたしたちの仲間の一人であり、同じ任務を割り当てられていました」。「仲間」という言葉も教会の交わりを表す言葉となりました。18節「ところで、このユダは不正を働いて得た報酬で土地を買ったのですが、その地面にまっさかさまに落ちて、体が真ん中から避け、はらわたがみな出てしまいました。このことはエルサレムに住むすべての人に知れ渡り、その土地は彼らの言葉で『アケルダマ』、つまり『血の土地』と呼ばれるようになりました。

 

(2)フォーサイスという日本の伝道者に影響を与えたスコットランドの説教者は語りました。主イエスを裏切り得た土地は、自らの自死により「アケルダマ」「血の土地」「呪われた土地」となった。しかし、十字架の主イエスがその呪われ罪の血の土地にも、御自分の血を注いで下さることにより、主イエスの血によって買い取られ、祝福された「アケルダマ」(血の土地)となった。その土地に派遣された宣教師がキリストを伝える。宣教師がキリストの証人として、世界伝道のために血を流された土地が、「アケルダマ」(血の土地)となった。主イエスの血、宣教師の血により「アケルダマ」(血の土地)が新しい響きを立てるようになった。

 

3.一人を加えて、主の復活の証人となる

(1)20節「そこで、主イエスがわたしたちと共に生活されていた間、つまり、ヨハネの洗礼のときから始まって、わたしたちを離れて天に上げられた日まで、いつも一緒にいた者の中からだれか一人が、わたしたちに加わって、主の復活の証人になるべきです」。

 ペトロは説教を通して、重要な提案をされました。主イエスの弟子はユダが欠けて、11人となりました。11人の弟子のままでは教会誕生は欠けがあるのです。甦られた主イエスとお会いした中から、どうしても一人を加えて、12人の弟子、使徒にしなければならない。何故なのか。12人が新しいイスラエル共同体・教会が成り立つための必要な数であるからです。「一人を加えて、主の復活の証人となるべきです」。教会は「主の復活の証人」の群れです。その中核となるのが、甦られた主イエスと出会った12人です。主イエスは甦って、私どもと共に生きておられることを証言する証人として生きる。主の復活の証人である主の教会の中核になるのが、甦られた主イエスとお会いした12人の使徒たちです。

 23節「そこで人々は、バルサバと呼ばれ、ユストともいうヨセフと、マティアの二人を立てて、次のように祈った。『すべての人の心をご存じである主よ、この二人のうちのどちらかをお選びになったかを、お示しください』。ユダが自分の行くべき所に行くために離れてしまった、使徒としてのこの任務を継がせるためです」。二人のことでくじを引くと、マティアに当たったので、この人が11人の使徒の仲間に加えられた」。

 

(2)主イエスの弟子たちは一方で、聖霊降臨という主の約束を信じ、心を合わせて熱心に祈っています。しかし他方で、聖霊降臨に備えて、一人を失った主の弟子たちのほころびを、何とかして繕うことをしています。それが一人の使徒をくじ引きで選び、12人の弟子・使徒とし、共同体の秩序を修復しようとしています。聖霊が降らないと嘆いてばかりいるのではない。聖霊降臨に備えて、共同体のほころびを繕うことをする。それもまた心を一つにして熱心に祈ることの課題であったのです。祈りの群れが一つになって、心を神に向け、自分たちの交わりのほころびを認め、繕う。そして聖霊降臨に備えるのです。

 今日、教会会議で選挙を行い、同数になった時に、くじ引きで決めます。それはこの場面に従っています。祈って主の御心に委ねるのです。ある説教者がこの御言葉を説き明かし、「準備完了」という題を付けました。一人欠員となっていた主の弟子・使徒を、くじ引きで主に委ねて与えられた新たな使徒が、マティアでした。12人の弟子・使徒となり、共同体の秩序を整え、準備完了し、心を合わせてたゆまず祈りながら、聖霊降臨を待ったのです。

 

4.御言葉から祈りへ

(1)ブルームハルト『ゆうべの祈り』(加藤常昭訳) 1月29日祈り 申命記6・4~5

「主よ、われらの神よ、感謝します。われらのすべての日々が、よき日であっても、自分には悪いように思われる日であっても、そこで自分がみ心の中に生き、あなたの欲し、行なわれることの中に生きていることを知っています。そのことのゆえにわれらは感謝し、この世におけるすべてのものにまさりあなたを愛したいのです。われらの心はあなたを慕いこがれます。あなたはわれらの父だからです。そして自分の生のすべてにおいてあなたを崇め、愛したいのです。それゆえに、この世におけるすべてを正しくさばいてください。主なる神よ、み心を常に行ない、あなたの戒めを果たしうるようにわれらを助けてください。アーメン」。

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