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2026年1月21日

「教会の伝道物語を黙想する45~パンを裂いて食べ、夜明けまで長い間話し続け~」

使徒言行録20章1~12節

井ノ川勝

1.第3回伝道旅行

(1)本日、私どもが黙想する20章も、パウロの第3回伝道旅行が記されています。20章はパウロの伝道旅行の中でも重要な出来事が記されています。こういう言葉から始まっています。「この騒動が収まった後」。「この騒動」とは、19章のエフェソの町での騒動です。パウロは群衆の大暴動に巻き込まれ、命の危険に晒されました。

 「パウロは弟子たちを呼び集め励まし、別れを告げてからマケドニア州へと出発した」。「弟子たち」は、最初の教会が洗礼を受け、教会に連なる者たちを呼んだ呼び名です。3年間、腰を据えて伝道したエフェソを去るに当たり、パウロは弟子たちを呼び集め、励ましました。「励ます」は人間的な意味で励ますのではなく、御言葉によって慰めることです。「説教」を意味する言葉です。そしてアジア州のエフェソから、エーゲ海を渡り、第2回伝道旅行で伝道したギリシア半島の北のマケドニア州へ出発しました。

 2節「そして、この地方を巡り歩き、言葉を尽くして人々を励ました後、ギリシアに来て、そこで三か月間過ごした」。第2回伝道旅行で伝道したフィリピ、テサロニケの教会の人々を訪ね、ここでも御言葉によって慰め、説教をしました。その後、ギリシアに来て、三か月間過ごしました。「ギリシア」はアカイ州を指します。やはり第2回伝道旅行で伝道した地です。コリントの教会等があります。この地で三か月の滞在期間、パウロはローマの信徒への手紙を書いたと言われています。19章21節で、「われ必ずローマをも見るべし」と語りました。パウロの伝道の目的地は、地の果て、ローマにありました。

 3b節「パウロは、シリア州へと船出しようとしていたとき、彼に対するユダヤ人の陰謀が起こったので、マケドニア州を通って帰ることにした」。ギリシアから船に乗ってシリア州に帰ろうとしました。ところが、パウロを捕らえ、殺害しようとするユダヤ人の陰謀が起こった知らせを受けました。再びマケドニア州を通って帰ることにしました。

 

(2)4節「同行した者は、ピロの子でベレア出身のソバトロ、テサロニケのアリスタルコとセクンド、デルベのガイオ、テモテ、それにアジア州出身のティキコとトロフィモであった」。パウロの伝道旅行に、各地で伝道して洗礼を受け、教会に連なる者となった弟子たちが同行しました。

 5節「この人たちは、先に出発してトロアスで私たちを待っていたが、私たちは、除酵祭の期間が明けた後フィリピから船出し、5日でトロアスに来て彼らと落ち合い、7日間そこに滞在した」。先行隊は出発して、アジア州のトロアスで、パウロたちを待っていました」。「除酵祭の期間」は、過越の祭です。出エジプトを記念し、焼いた小羊と酵母菌の入っていないパンを食べます。それがキリスト教会では主イエスの最後の晩餐、受難、十字架の出来事を覚える受難週となりました。パウロはトロアスで先行隊と落ち合い、そこで7日間過ごしました。

 

2.パンを裂いて食べ、夜明けまで長い間話し続け

(1)7~12節は、トロアスでの7日間の伝道が記されています。7節「週の初めの日、私たちがパンを裂くために集まっていると」。この言葉は最初の教会の礼拝を表す重要な言葉です。「週の初めの日」。この言葉は福音書において、主イエスの甦りの出来事を指し示す言葉となりました。マタイ28・1、マルコ16・1,ルカ24・1,ヨハネ20・1,19。主イエスが甦られた日曜日が、キリスト教会の安息日となりました。主を礼拝する日となりました。キリスト教会がユダヤ教から別れた決定的な理由が、ここにあります。週の初めの日、「パンを裂くため」に集まりました。聖餐を祝うために集まりました。最後の晩餐、甦られた主イエスとの食事を想い起こす食事です。キリストのいのちに与る食事です。ここにキリスト教会の礼拝の本質があります。ヨハネの黙示録1章10節では、「主の日」と呼んでいます。主イエスが甦られた日です。今日まで受け継がれている大切な呼び名です。

 7b節「パウロは翌日出発する予定で人々に話をしたが、その話は夜中まで続いた」。パウロのトロアス滞在期間は7日間です。日曜日の翌日、出発する予定でした。安息日の礼拝は1回だけです。パウロの説教は夜中まで続きました。キリスト教会の礼拝のもう一つの大切なことが語られています。説教です。聖餐と説教を通して、十字架につけられ、甦られた主イエス・キリストが、今、ここに生きておられることを証し、生けるキリストを礼拝しました。

 もう一つ、ここで注目すべきことがあります。トロアスの集会・礼拝は夕べから夜に行われました。日曜日の朝、日の出とともに、人々は集まり、主を礼拝しました。しかし、日曜日は当時、休みの日ではありませんでした。教会に連なる人々は早天礼拝の後、仕事に出かけます。そして仕事を終えて、再び夕べの礼拝に集まって来ます。そこで共に愛餐の食事をしました。その後、「パン裂き」・聖餐に与りました。キリストの一つの体に与りました。パン裂きには、説教が伴いました。

 

(2)8節「私たちが集まっていた階上の部屋には、たくさんの灯りがついていた」。集まっていた場所は信徒の家です。その家は三階建てでした。階上に大きな部屋があり、そこで礼拝を捧げてしました。トロアスは港町です。夜になると真っ暗になります。しかし、一つの家にはたくさんの灯りが灯っていて、暗い町に光が注がれています。教会の姿が映し出されています。教会は闇が支配するこの世に、灯りを灯し、光を注ぐ存在です。私どもは礼拝を通して、この世にまことの光・キリストを証ししているのです。教会は燈台の役目を果たしています。この世を航海する船に、灯りを灯し、光を注ぎ、航海の行き先である神の国を指し示します。「起きよ、光を放て。あなたの光が来て、主の栄光があなたの上に昇ったのだから」(イザヤ60・1)。

 しかし、礼拝中、事件が起こりました。9節「エウティコと言う青年が、窓に腰を掛けていたが、パウロの話が長々と続いたので、ひどく眠気を催し、眠りこけて三階から下に落ちてしまった」。エウティコという青年は早朝に礼拝を捧げ、一日仕事をし、夕方集会所に集まり、愛餐の食事をし、パン裂きである聖餐に与りました。パウロ先生の説教は熱がこもり、長々と届きました。エウティコは窓に腰を掛けて、説教を聴いていました。外からの潮風、そして部屋の中ではたくさんの灯が灯っている。多くの人々が集まり、パウロ先生の説教を聴いている。部屋の中は熱気に溢れています。エウティコはひどく眠気を催し、眠りこけてしまいました。されだけではなく、三階の窓から下に落ちてしまいました。礼拝中に起きた不慮の事故です。

 礼拝を捧げていた人々は礼拝を中断しました。急いで下に駆け下りました。9b節「起こしてみると、もう死んでいた」。10節「パウロは降りて行き、彼の上にかがみ込み、抱きかかえて言った。『騒がなくてもよい。まだ生きている』」。パウロがエウティコの上に屈み込み、抱きかかえますと、エウティコはまだ生きていました。

 使徒言行録には最初の教会の礼拝の出来事が様々に記されています。礼拝と居眠り、説教と居眠りとは、必ず起こります。礼拝における居眠りの歴史が、エウティコから始まりました。エウティコという名前まで記されています。最初の教会の大切な信徒となったのでしょう。「居眠りのエウティコ」というあだ名が付けられたのかもしれません。しかし、それ以上に、「眠りから目覚めたエウティコ」「甦らされたエウティコ」と呼ばれたことでしょう。礼拝は聖餐と説教により、生けるキリストと出会い、眠りから目覚め、甦らされる出来事が起こるところです。

 

(3)11節「そして、また上に行って、パンを裂いて食べ、夜明けまで長い間話し続けてから出発した」。礼拝は夜明けまで続きました。徹夜の礼拝となりました。再び「パンを裂いて食べ」、聖餐が行われました。パウロ先生の説教は夜明けまで続きました。礼拝を捧げている人々は、聖餐と説教により、生き生きと主を礼拝したことでしょう。「話し続けた」という言葉は、後に「説教をする」という言葉となりました。

 12節「人々は生き返った若者を連れ帰り、大いに慰められた」。礼拝は甦られた主イエス・キリストとお会いし、私どもが新しく甦らされる出来事が起こるところです。礼拝に招かれた一人の人間が、キリストにあって新しく創造される出来事が起こるところです。「誰でもキリストにあるなら、その人は新しく造られた者です。(見よ)、古い者は過ぎ去り、まさに新しいものが生じた」(コリント二5・17)。

 

3.御言葉から祈りへ

(1)ブルームハルト『ゆうべの祈り』(加藤常昭訳) 1月21日の祈り 詩編18・7

「愛しまつる在天の父よ、あなたがわれらの父でもいてくださることは、われらのよろこびです。われらのだれもが生きなければならぬ人生を、あなたは支配し、導き、正しいものへと至らせてくださいます。あれこれのことにこだわる必要もなく、くりかえして自由に、くりかえして新しき生き、くりかえして前進し、自分と自分の仲間のことをよろこび、そうすることによってあなたを賛美し、み力がわれらに現れるようにしてくださいます。そしてこの地上があなたの天の国となり、この地上にみ心が行なわれ、この地上で、貧しい者、弱い者、小さい者、慰める者、なやめる者に助けが与えられるようにしてくださるのです。み名はほむべきかな!み名のゆえにわれらはよろこびにあふれています。アーメン」。

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