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2026年2月25日

「教会の伝道物語を黙想する50~勇気を出せ、ローマでも証しをしなければならない~」

使徒言行録23章11~35節

井ノ川勝

1.エルサレムでのパウロの説教

(1)伝道者パウロの第三回伝道旅行の最終地はエルサレムでした。21章17節以下です。エルサレム教会の兄弟姉妹は喜んでパウロを迎えました。パウロは伝道旅行の実りを報告しました。神が異邦人にも行われた恵みを語りました。しかし、ユダヤ人の全てがパウロを歓迎したのではありませんでした。21章27節以下。パウロは捕らえられ、群衆の前で打ち叩かれました。パウロを殺そうとしました。エルサレムは混乱状態に陥りました。21章31節以下。それを聞いた守護隊の大隊長は直ちに兵士と百人隊長を連れて、駆けつけました。大隊長はパウロを二本の鎖で縛るよう命じ、パウロに語りました。「あなたは何者であるのか。また、何をしたのか」。パウロは答えます。「私は確かにユダヤ人です。キリキア州のれっきとした町、タルソスの町の市民です。どうか、この人たちに話をさせてください」。パウロは大隊長の許可を得て、人々の前で、ヘブライ語で説教をしました。22章1節以下。パウロが自らの歩み、回心を語った説教です。

 

(2)「私は、キリキア州のタルソスで生まれたユダヤ人です。そして、この都で育ち、ガマリエルのもとで先祖の律法について厳しい教育を受け、今日の皆さんと同じように、熱心に神に仕えてきました。私はこの道を迫害し、男女を問わず縛り上げて牢に送り、殺すことさえしたのです」。

 パウロは律法学者ガマリエルの下で、律法の教育を厳しく受けました。律法学者になったパウロは、十字架のイエスを救い主と信じるキリスト者、「この道の者」(主の道の者)へ迫害を加えました。最初の教会の殉教者ステファノの殺害にも協力しました。エルサレムからシリアのダマスコに逃げて行ったキリスト者を追いかけて行きました。そこで甦られたキリストと出会います。パウロの回心の出来事です。9章のパウロの回心を、説教で語り直しています。22章6節以下。

 「旅を続けてダマスコに近づいたときのこと、真昼頃、突然、天から強い光が私の周りを照らしました。私は地面に倒れ、『サウル、サウル、なぜ、私を迫害するのか』と語りかける声を聞いたのです。『主よ、あなたはどなたですか』と尋ねると、『私は、あなたが迫害しているナザレのイエスである』と答えがありました。一緒にいた人たちは、その光を見たのですが、私に話しかけた方の声は聞きませんでした。『主よ、どうしたらよいでしょうか』と申しますと、主は『立ち上がってダマスコへ行け。あなたのなすべきことは、すべてそこで告げられる』と言われました。私は、その光の輝きのために目が見えなくなっていたので、一緒にいた人たちに手を引かれて、ダマスコに入りました」。

 22章12節以下。ダマスコにはアナニアという主の弟子がいました。律法に従って生活する信仰の篤い人で、そこに住むすべてのユダヤ人の間で評判の良い人でした。アナニアがいなければ、教会の迫害者パウロが教会に迎え入れることはありませんでした。アナニアがパウロに語ります。「兄弟サウル、元どおり見えるようになりなさい」。すると、パウロの目は見えるようになりました。アナニアはパウロに語りました。

「私たちの先祖の神が、あなたをお選びになった。それは、御心を悟らせ、あの正しい方に合わせて、その口からの声を聞かせるためです。あなたは、見聞きしたことについて、すべての人々に対してその方の証人となる者だからです。さあ、何をためらっているのです。立ち上がりなさい。その方の名を呼び求め、洗礼を受けて罪を洗い清めなさい」。

 パウロは甦られた主イエス・キリストに捕らえられ、回心させられます。そして、アナニアから主イエス・キリストの名により洗礼を受け、キリスト者として立てられました。22章17節以下。パウロがエルサレムに帰り、神殿で祈っていた時、甦られた主が現れ、語りかけました。「行け。私があなたを遠く異邦人のもとに遣わすのだ」。パウロは主から異邦人に、キリストの名を伝える伝道者として召されました。

 

2.勇気を出せ、ローマでも証しをしなければならない

(1)22章22節以下。パウロの説教を聞いたエルサレムのユダヤ人たちは声を張り上げて言いました。「こんな男は、地上から除いてしまえ。生かしてはおけない」。彼らはわめき立て上着を投げつけ、砂埃を空中にまき散らしました。大隊長はパウロを兵営にいれ、鞭で打って取り調べをしようとしました。パウロの側に立っていた百人隊長が言いました。「ローマの市民を、裁判にかけずに鞭で打ってもよいのですか」。パウロはローマの市民権を持ち、裁判を受ける権利を持っていました。

 翌日、大隊長は、パウロがなぜユダヤ人から訴えられているのかを確かめるため、ユダヤの議会、最高法院に引き渡しました。23章1節以下。パウロは最高法院の議員たちと激しく論争をしました。論争が激しくなったので、大隊長は、パウロが彼らに引き裂かれてしまうのではないかと心配し、パウロを力ずくで助け出し、兵営に連れて行くよう命じました。

 23章11節。その夜、甦られた主イエスはパウロのそばに立って語られました。「勇気を出せ。エルサレムで私のことを力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」。

激しい論争とユダヤ人の暴動に遭遇し、パウロの心は激しく揺れ動きました。しかし、その時、甦られた主イエスが語られました。「勇気を出しなさい」。主イエスが心騒がせる弟子たちに遺言説教で語られた結びの言葉でもあります。「あなたがたには世で苦難がある。しかし、勇気を出しなさい。私はすでに世に勝っている」。「勇気を出しなさい」。自分の力を振り絞り、立ち向かうことではありません。主としっかり結び付くことから生まれる勇気です。主なる神がヨシュアに語られた「強く、雄々しくあれ」(ヨシュア記1・5~6)と響き合う言葉です。

「エルサレムで私のことを証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」。

甦られた主イエスから与えられた使命です。パウロは既に語りました。19章21節「私はローマも見なくてはならない」。文語訳「我ローマをも見るべし」。しかし、それはパウロの強い決心ではありません。主の召し、使命でした。「ローマでも証しをしなければならない」。「ねばならない」という言葉は、主の堅い決心です。様々な激しい論争、暴動という人間の思いが渦巻く中で、ただ主の堅い決心、主の御心が立つのです。

 

(2)しかし、パウロのローマ行きを阻む力は満ち溢れていたのです。23章12節以下。

 「夜が明けると、ユダヤ人たちは集まって、パウロを殺すまでは飲み食いをしないという誓いを立てた。共に誓いを立てた者は、四十人以上もいた。彼らは、祭司長たちや長老たちのところへ行って、こう言った。『私たちは、パウロを殺すまでは何も口にしないと、堅く誓い合いました』」。

 激しい言葉です。パウロを殺すまで飲み食いしないと誓いを立てた者が四十人以上もいた。この誓いが果たされなければ、神から呪われてもよいという激しい誓いです。人間の決心です。

 23章16節以下。しかし、パウロの姉妹の息子が、この待ち伏せのことを耳にし、パウロに知らせました。ここにパウロの姉妹の息子、甥が登場します。パウロは若き頃、エルサレムでガマリエルに門下生となりました。パウロの姉が結婚しエルサレムに住んでいました。パウロは姉の家で下宿していたと思われます。また、パウロの姉の家は祭司の家系だったので、立場の高い方々とも知り合いであったと思われます。パウロは百人隊長の一人を呼び、甥を大隊長の下に連れて行くよう頼みました。甥は大隊長に、パウロを殺す請願を立てている四十人以上の過激グループのことを告げました。

 23章23節以下。大隊長は百人隊長二人を呼び、命じました。「今夜9時にカイサリアへ出発できるように、歩兵二百名、騎兵七十名、軽装兵二百名を準備せよ」。パウロ一人を護送するのに、大掛かりな警備隊です。それだけ過激なグループを警戒していました。こうしてパウロのローマへ向けての命懸けの旅が始まりました。パウロの最後の伝道旅行です。しかし、それは人間の計画ではありません。「勇気を出せ。エルサレムで私のことを力強く証ししたように、ローマでも証しをしなければならない」。神の堅い決心によって立てられた計画でした。

 

(3)第二次世界大戦後、オランダのアムステルダムで、世界教会会議が行われました。世界大戦後の世界の教会の歩みを方向付ける会議となりました。主題講演をしたのは、神学者カール・バルトでした。バルトは語りました。「人間の混乱の中で神の摂理が働く」。世界は大混乱の中にある。しかし、神の摂理の御手が働き、世界を導く。パウロのローマ行きも将に、人間の混乱の中で神の摂理が働きました。今日の混乱した世界の中で、教会を導く信仰がここにあります。「人間の混乱の中で、神の摂理が働く」。

 

3.御言葉から祈りへ

(1)ブルームハルト『ゆうべの祈り』(加藤常昭訳) 2月25日の祈り イザヤ42・1

「愛しまつる在天の父よ、われらをみ恵みの中へ置き、み恵みの光をわれらのためにみことば上に照らしてください。約束された時への確固たる信仰のうちに、常にわれらを守ってください。その時あなたの救いは地上のすべての民に及ぶのです。時にわれらが不安におとしいれられることもありましょう。人間はその時を耐えることができるだろうか?その時をまなび知り、みことばに目をとめるだろうか?より困難な時にも踏みこたえて、約束のものをわれらが経験しうるその時を知り、時期を定めるあなたにのみ、身を向けているだろうか?と。それゆえに全世界に対してみ手をつよめてください。あなたこそ唯一の主であり、われらを大いなる艱難より救い出しうる唯一の力なのです。アーメン」。

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