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2026年9月16日

「アブラハム物語を黙想する11~アブラハムは妻サラを、カナンの地にあるマムレに葬った~」

創世記23章1~20節

井ノ川 勝 牧師

1.サラの死と埋葬

(1)愛する独り子イサクを神に献げる、という神からの最大の試練を潜り抜けたアブラハムに、残された人生の日々は長くはありませんでした。しかし、残された人生の日々で、どうしてもしなければならないことがありました。神の約束に応えることです。イサク奉献の出来事の場面で、神が自らにかけて誓われた御言葉の中で、「神の約束」が改めて語られていました。

 22章16節「あなたがこうして、自分の息子、自分の独り子を惜しまなかったので、私はあなたを大いに祝福し、あなたの子孫を空の星のように、海辺の砂のように大いに増やす。あなたの子孫は敵の門を勝ち取るであろう。地上のすべての国民はあなたの子孫によって祝福を受けるようになる。あなたが私の声に聞き従ったからである」。

 「神の約束」は具体的に二つあります。一つは「あなたの子孫を空の星のように、海辺の砂のように大いに増やす」。子孫の祝福です。具体的には、息子イサクの嫁選びです。これが24章の「イサクとリベカの結婚」です。もう一つは「あなたの子孫は敵の門を勝ち取るであろう」。「敵の門」とは敵の町を意味します。カナンの土地です。約束の地、カナンの土地を得ることです。これが23章の妻サラの埋葬のため、墓地を購入したことです。

 

(2)「アブラハム物語」は、「サラの死と埋葬」「アブラハムの死と埋葬」(25・7~11)を丁寧に語っています。「死と埋葬」は私どもの人生に残された最後の課題です。森有正が「アブラハム物語の説教」で、「死と墓」と題して語り、この場面を注目しています。私どもの人生の最後にある課題です。

 1節「サラの生涯は127年であった。これがサラの生きた年数である。サラは、カナンの地のギルヤト・アルバ、すなわちヘブロンで死んだ。アブラハムはサラのところへ行き、その死を悼んで泣いた」。

 人生を共にして来た伴侶の死は悲しいものです。アブラハムは妻サラの傍らで、死を悼み泣きました。神に導かれて、故郷ウルからハランへ、ハランからカナンへのアブラハムの旅は、妻サラを伴った度です。アブラハムの苦しみ、試練を共有してくれた掛け替えのない伴侶です。しかし、伴侶との別れが必ずやって来ます。しかし、アブラハムはサラの傍らで、いつまでも泣き崩れるわけにはいきませんでした。墓地の購入という課題がありました。

 3節「アブラハムは妻のなきがらの傍らから立ち上がり、ヘトの人々に語りかけた。『私はあなたがたのもとでは寄留者であり、滞在者です。あなたがたが所有している墓地を譲っていただきたいのです。そうすればこのなきがらを移して葬ることができます』」。

 5節「ヘトの人々はアブラハムに答えた。『お聞きください。ご主人。あなたは私どもの中で神のように優れたお方です。どうぞ、私どもの墓地のいちばん良い所に、亡くなられた方を葬ってください。私どもの中には、自分の墓地を差し出さずに、亡くなられた方を葬らせない者など一人としていないでしょう』」。

 「神のように優れたお方」とは、「神の君主」(族長)という意味である。ヘト人はカナンの先住民です。寄留者であり、滞在者であるアブラハムに、好意的です。しかし、墓地の売買という厳しい交渉が始まります。

 

2.代価を払って買い取る

(1)7節「アブラハムは立ち上がり、その土地の民であるヘトの人々にひれ伏し、語りかけた。亡くなった妻を葬ることを認めていただけますなら、どうか私の願いをお聞きください。ツォハルの子エフロンに頼んでみてください。彼の畑地の端にあるマクペラの洞窟を譲っていただきたいのです。十分な代価をつけてお支払いしますので、あなたがたが所有しておられる墓地を譲ってください」。

 「代価を払って買い取る」。後に、「贖罪」という言葉になります。マルコ10・45「人の子は、仕えられるためではなく仕えるために、また、多くの人の身代金として自分の命を救うために来たのである」。「身代金」が「代価を払って買い取る」(贖罪)を意味する。僅かな墓地であっても、約束の地を所有する小さな一歩である。

 10節「エフロンはその時、ヘトの人々の中に座っていた。ヘト人エフロンは、町の門にやって来たすべての人々が聞いているところで、アブラハムに答えた。『どうか、ご主人、お聞きください。あの畑地は差し上げます。そこにある洞窟も差し上げます。私の一族の立ち会いの下、差し上げます。どうか亡くなった方を葬ってください』」。

 アブラハムの申し出に対し、エフロンは無償で差し上げるという気前の良さを示した。しかし、これは中近東の商い取り引きと言われている。言葉の背後にある打算がある。アブラハムはそれを見抜きながら、しかし、約束の地の取得に向けて、知恵を絞る。主イエスが語られる信仰とは、「ハトのように素直で、へびのように賢く」。素直さと賢さが求められる。

 12節「アブラハムはその土地の民の前にひれ伏した。そして、その土地の民が聞いているところで、エフロンに言った。『いやそれでも、私の願いを聞いてくださるのでしたら、畑地の代金はお支払いします。どうかお受け取りください。どうすれば、亡くなった妻をそこに葬ってやれるでしょう』」。

 14節「するとエフロンはアブラハムに答えた。『ご主人。お聞きください。土地は銀四百シェケルです。それが私とあなたの間で何ほどのものでしょう。どうか亡くなられた方を葬ってください』」。

 初めは墓地の無償提供を申し出、次には銀四百シェケルという法外な値段を要求する。土地の売買交渉のやり方です。ダビデは麦打ち場と牛を銀50シェケルで買い取り(サムエル下24・24)、エレミヤがアナタタの畑を銀17シェケルで買い取った(エレミヤ32・9)。銀四百シェケルは法外な値段である。

 16節「アブラハムはエフロンの言うとおりにした。アブラハムはエフロンに商人の通用銀で四百シェケルを量って支払った。それはヘトの人々が聞いているところで彼が言った代金の銀である」。

 アブラハムはエフロンの言う通り、銀四百シェケルを支払い、墓地を購入した。代価を払って買い取った。

 

(2)17節「こうして、マムレの向かい、マクペラにあるエフロンの畑地、すなわち、畑地とそこにある洞窟、および畑地の境界にあるすべての木々が、町のミンにやって来ていたすべてのヘトの人々が見ているところで、アブラハムの所有と決まった。その後、アブラハムは妻のサラを、カナンの地にあるマムレ、すなわちヘブロンの前のマクペラの畑地の洞窟に葬った。こうして、その畑地とそこにある洞窟は、ヘトの人々の手から離れて、アブラハムが所有する墓地となった」。

 アブラハムが代価を払って買い取った墓地は、ヘブロンのマクペラの洞窟であった。ヘブロンはダビデ王が最初に都を築いた地である。

 アブラハムもこの墓地に葬られた。25章7節「アブラハムの生涯の年数は175年であった。アブラハムは良き晩年を迎え、老いた後、生涯を全うして息絶え、死んで先祖の列に加えられた。息子のイサクとイシュマエルは、マムレの向かい、ヘト人ツォハルの子エフロンの畑地にあったマクペラの洞窟に彼を葬った。その畑地は、アブラハムがヘトの人々から買い取ったもので、そこにアブラハムは妻サラと共に葬られた。アブラハムが死んだ後、神はその子イサクを職服された」。

神の約束の土地の所有が、墓地という僅かな土地取得で成就した。

(3)地上の墓は何を示しているのか。ヘブライ人への手紙13章11節以下。

「この人たちは皆、信仰を抱いて死にました。約束されたものは手にしませんでしたが、はるかにそれを見て、喜びの声を上げ、自分たちが地上ではよそ者であり、滞在者であることを告白したのです。彼らはこのように言うことで、自分の故郷を求めていることを表明しているのです。もし出て来た故郷のことを思っていたのなら、帰る機会はあったでしょう。ところが実際は、彼らはさらにまさった故郷、すなわち天の故郷にあこがれていたのです。神は彼らの神と呼ばれることを恥となさいません。事実、神は、彼らのために都を用意しておられたのです」。

 

3.御言葉から祈りへ

(1)ブルームハルト『ゆうべの祈り』(加藤常昭訳) 9月16日の祈り ヨハネ15・26~27

「大いなる神にして救い主よ、あなたはわれら人の子をみ手に保とうとしてくださいます。そしてわれらはあなたとの交わりによって真実の生をまなぶのです。われらは自分たちがすでに受けることができたすべてのものを感謝し、祈り願います。われらの全生活において聖霊によって更にわれらを導いてください。あなたはわれらに聖霊を与えようとしてくださいます。聖霊はわれらが新しい勇気、新しい方、真理の新しい認識をも見いだしうるようにと、われらの心を照らしてくださるのです。あなたはわれらによってほめたえられるべきお方です。あなたがわれらのうちに必ず働いて、われらが死の危機より自由になり、いっさいの圧迫から解き放たれていのちあるものとしてくださるのです。そしてわれらが常に、さまざまな労苦や戦いにあっても高くあなたの高みにまで飛躍し、地上にあってみ名をたたえることができますように。アーメン」。

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