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2025年10月29日

「教会の伝道物語を黙想する34~彼らはそれを読み、励ましに満ちた言葉を知って喜んだ~」

使徒言行録15章22~35節

井ノ川勝

1.エルサレム教会会議

(1)使徒言行録15章は、教会の最初の会議であるエルサレム会議が記されています。聖霊によって生まれた教会が大切にしてきたものは、礼拝と伝道です。しかし同時に、会議も大切にしてきました。教会に起こる様々な問題を主の御心を尋ね求めながら協議してきました。最初の教会にどのような問題が起こったのでしょうか。異邦人キリスト者を中心とするアンティオキア教会の祈りに押し出されて、パウロとバルナバは様々な地域に伝道しました。ユダヤ人だけでなく、異邦人が主イエス・キリストを信じ、キリストの名による洗礼を受け、その地域に教会が誕生しました。それは喜ばしいことでした。ところが、ユダヤ人キリスト者中心のエルサレム教会の一部の者から問題提起がなされました。福音が様々な地域に広がり、教会が生まれる中で、教会のアイデンティティはどこにあるのかです。どの地域の教会でも同じキリストの教会である、との同一性が確保されなければなりません。ユダヤ人キリスト者の中に、キリストの名による洗礼だけでは不十分であり、神に選ばれた印として、割礼を受け、モーセの律法に従うことも必要だと唱える者がいました。

 

(2)そこで各教会を代表する使徒、長老たちが集まり、エルサレム会議が招集されました。会議の議題は、福音の根幹に関わる「救いの確かさは何か」です。キリストの名による洗礼のみか、あるいは、洗礼+割礼と律法なのかです。激しい議論がなさされました。教会会議を導くのは、聖霊です。教会会議を支配するのは、「キリストの御支配」です。キリストの主権が中心に立ちます。エルサレム会議を方向付けたのは、ペトロの発言でした。御言葉に基づく説教でした。15章8節「人の心をお見通しになる神は、私たちに与えてくださったように異邦人にも聖霊を与えて、彼らを受け入れられたことを証明なさったのです。また、彼らの心を信仰によって清め、私たちと彼らとの間に何の差別もなさいませんでした」。11節「私たちは、主イエスの恵みによって救われると信じていますが、これは、彼ら異邦人も同じことです」。

 また会議の議長をしていたヤコブが発言しました。アモス書9章11~12節を引用しました。「人々のうちの残った者や、私の名で呼ばれるすべての異邦人が、主を求めるようになるためである」。そしてこう結びました。「神に立ち帰る異邦人を悩ませてはなりません」。但し、付則を付けました。モーセの律法の内、「偶像に供えて汚れた物と、淫らな行いと、絞め殺した動物の肉と、血とを避けるように」。

 

2.教会会議の後で

(1)教会会議で何が決められたかが重要です。それを主の御心と信じて議決したからです。しかし更に重要なことは、会議で決められたことが行われることです。会議に出席しなかった教会員にも報告され、守られることです。金沢教会も教会総会を開催します。しかし、残念ながら全ての教会員が出席しません。教会総会に出席しなかった教会員にも、教会総会で決められたことを報告し、従ってもらうことが必要です。教会は信仰によって一つです。同時に、会議の決定によって一つです。そのようにして主の教会は立って行きます。

 22節以下は、教会会議の後のことが記されています。「そこで、使徒と長老たちは、教会全体と協議して自分たちの中から人を選び、パウロやバルナバと一緒にアンティオキアに派遣することにした。選ばれたのは、バルサバと呼ばれるユダおよびシラスで、兄弟たちの間で指導的な立場にいた人たちである」。

 エルサレム教会会議で決定したことを、アンティオキア教会に伝えなければなりません。アンティオキア教会の指導者パウロとバルナバだけでなく、エルサレム教会の信徒であり、指導的な立場にいたバルサバと呼ばれたユダとシラスも選ばれ、遣わされました。「バルサバ」という名は「安息日の子」という意味です、安息日に生まれたからこう呼ばれたのか、それとも安息日を厳格に守っていたので、こう呼ばれていたのかもしれません。ユダヤ人キリスト者です。もう一人は「シラス」。「シルワノ」とも呼ばれます。ギリシャ語を話すユダヤ人キリスト者です。ギリシャ的(ヘレニズム)の教養を身に付けたキリスト者です。生粋のヘブライ語を話すユダヤ人と、ギリシャ的な教養を身に付けたギリシャ語を話すユダヤ人が選ばれ、アンティオキア教会に派遣されました。

 

(2)23節「使徒たちは、次の手紙を彼らに託した。『使徒と長老たちが兄弟として、アンティオキアとシリア州とキリキア州に住む、異邦人の兄弟たちに挨拶いたします』」。アンティオキア教会へ託されたエルサレム教会からの手紙です。「兄弟」から「兄弟」に送られた手紙です。主にあって兄弟と呼び合う関係、一つであることを挨拶で示しています。

 24節「聞くところによると、私たちのうちのある者がそちらに行き、私たちから何の指示もないのに、いろいろなことを言って、あなたがたを騒がせ動揺させたとのことです。そこで、人を選び、私たちの愛するバルナバとパウロとに同行させて、そちらに派遣することを、私たちは満場一致で決定しました。このバルナバとパウロは、私たちの主イエス・キリストの名のために身を献げている人たちです。それで、彼らと共にユダとシラスを派遣しますが、二人は同じことを口頭で伝えるでしょう」。

 バルナバとパウロは「私たちの主イエス・キリストの名のために身を献げている人たち」。私たちが遣わすユダとシラスも同じである。素晴らしい紹介の言葉です。「私たちの主イエス・キリストの名のために身を献げている人たち」の言葉として、教会会議の報告を重んじ、受け入れてほしい。

 28節「聖霊と私たちは、次の必要な事柄以外、一切あなたがたに重荷を負わせないことにしました。すなわち、偶像に献げた肉と、血と、絞め殺した動物の肉と、淫らな行いとを避けることです。以上を慎めばよいのです。お元気で」。

 「聖霊と私たち」という順序の言葉は注目すべきです。教会会議を導いたのは、「聖霊」です。聖霊に導かれて、会議の構成員が協議し、決定しました。教会会議の決定は、異邦人もキリストの名によってのみ救われる。但し、ユダヤ人キリスト者に配慮してほしいことがある。教会生活にはお互い配慮すべき「愛の配慮」がある。「偶像に献げた肉と、血と絞め殺した肉と、淫らな行いとを避けること」。

 

3.彼らはそれを読み、励ましに満ちた言葉を知って喜んだ

(1)30節「さて、彼ら一同は見送りを受けて出発し、アンティオキアに到着すると、信者全体を集めて手紙を手渡した。彼らはそれを読み、励ましに満ちた言葉を知って喜んだ」。

手紙は「福音」(喜びの知らせ)の役割を担いました。そこには「励ましに満ちた言葉」が記されていました。「慰めに満ちた言葉」です。10月31日は宗教改革記念日です。ルターが重んじた宗教改革の三本柱は、「聖書のみ」「信仰のみ」「万人祭司」です。ルターは「シュマルカルデン条項」で、教会が主の教会として立つべき柱を記しました。「説教」「洗礼」「聖餐」「兄弟姉妹の相互の慰めの対話」です。「万人祭司」の具体的な姿が、「兄弟姉妹の相互の慰めの対話」です。

 32節「ユダとシラスは預言者でもあったので、いろいろと話をしてきょうだいたちを励まし力づけ、しばらくそこに滞在した後、きょうだいたちから平和の挨拶を受けて送り出され、自分たちを派遣した人々のところへ帰って行った」。

 ユダとシラスは「預言者」でもありました。「神の言葉を託された説教者」です。説教により、アンティオキア教会の兄弟姉妹を「励まし力づけ」ました。「慰め」ました。説教は神の慰め告げることにあります。「慰め」は、「神の傍らに呼ぶ」という意味です。

 35節「しかし、パウロとバルナバは、アンティオキアにとどまり、他の多くの人と共に、主の言葉を教え、福音を告げ知らせた」。

 

(2)☨は、使徒言行録の巻末に、この言葉が記されている写本もあることを示しています。15章34節「もっとも、シラスはそこにとどまることにした」。

 この後、第二回伝道旅行が始まります。パウロとバルナバは第一回伝道旅行で脱落したマルコを連れて行くかどうかで決裂しました。バルナバがマルコを連れて、パウロはシラスを連れて伝道旅行を出発しました。そこで「シラスはそこにとどまった」という言葉が加えられたのではないか、との推測があります。

 

4.御言葉から祈りへ

(1)ブルームハルト『ゆうべの祈り』(加藤常昭訳) 10月29日の祈り 詩編89・9~16

「愛しまつる在天の父よ、あなたはどんなにわれらに好意を持ってくださったことでしょうか、どんなに多くの善きものをすでに与え、更に経験させてくださることでしょうか!それゆえにわれらの心はよろこびを心に抱いて、安息にはいりたいと願うのです。それが昼も夜もわれらの礼拝なのです。あなたはそれ以上のことを欲してはおられないのです。ただこのことに誠実でありたいとわれらは願います。われらはよろこびたいのです。自分の人生をよろこびをもって見つめたいのです。たとえ暗黒がわれらを迎えようと、われらはのぞみを持つのです。あなたの救いは来るのだ!と。主よ、われらの神よ、現在においても、将来をのぞんでも、このことによってわれらはよろこぶのです。あなたが今日すでに与えていてくださっていることのゆえに、われらはよろこぶのです。アーメン」。

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