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2026年10月14日

「ヤコブ物語を黙想する4~あなたは先祖の地、親族のもとに帰りなさい。私はあなたと共にいる~」

創世記 31章1~12節

井ノ川 勝 牧師

1.ヤコブの逃亡生活

(1)「ヤコブ物語」の創世記29~31章は、パダン・アラムのハラン、叔父ラバンの許で、ヤコブが20年間過ごした出来事が記されています。ヤコブが神の祝福(アブラハムを通して全世界の民族を祝福する)を受け継ぐためには、どうしても経験しなければならない試練の20年でした。双子の弟として生まれたヤコブは、兄エサウを騙し、長子の権利を掴み取り、父イサクを騙し、神の祝福を掴み取りました。その結果、家族の許に留まることが出来なくなりました。神の家族の破れです。しばらくの間、母リベカの兄ラバンの許に逃亡し、生活することになりました。逃亡生活の最初の日の夜、夢で、ヤコブは天から地に伸ばされた梯子を見、神の言葉を聴きました。「私は主、あなたの父祖アブラハムの神、イサクの神である。私はあなたと共にいて、あなたがどこへ行くにしてもあなたを守り、この土地に連れ戻す、私はあなたに約束したことを果たすまで、決してあなたを見捨てない」。この神の言葉が、20年間のヤコブの逃亡生活を支えました。

 

(2)ヤコブは何故、叔父ラバンの許で逃亡生活をしなければならなかったのか。一つは兄エサウの殺意から身を守るためです。神の家族が崩壊しないためです。しかし、ヤコブは叔父ラバンの許で、様々な試練を受け、ラバンから何度も騙される経験をします。ヤコブの信仰と品格が練られます。もう一つは、同じアラム人から妻を迎え、神の祝福を受け継ぐことでした。

 

2.神の民(イスラエル12部族)の誕生物語

(1)29章1~30節。ハランに到着したヤコブは井戸にやって来ました。井戸は羊に水を飲ませるために、人々が集まる場所です。この井戸でヤコブは叔父ラバンの娘ラケルと出会います。ラケルの父が叔父ラバンであることを知ります。その場面9~14節に記されています。

 ヤコブはラケルを愛し、ラバンに妻として迎えることを申し出ます。その条件として、ラケルのために7年間働きました。15~20節。ヤコブはラケルを妻として迎える日を迎えました。結婚の祝宴が終わり、夕暮れになった時、ラケルはヤコブの許にラケルではなく、その姉のレアを連れて行きました。朝になり、ヤコブはラケルではなく、姉のレアであることに気づきました。21~30節。ヤコブは父イサクに、エサウと偽り、騙し、神の祝福を掴み取りました。しかし今度は、叔父ラバンに騙され、ラケルではなく、姉レアを迎え入れました。騙して神の祝福を掴み取ったヤコブが、騙される痛みを経験しました。25節「あなたは何ということをしたのか。なぜ私をだましたのですか」。叔父ラバンの策略です。26節「私たちのところでは、妹を姉より先に嫁がせるようなことはしないのだ。さらにもう7年間私のところで働くということで、あの娘もあなたに嫁がせよう」。ヤコブはレアのために、更に7年間働くことになりました。

 

(2)29章31節~30章24節。ヤコブとレア、ヤコブとラケルとの間に、子どもが誕生します。11人の男の子が与えられます。後に、もう一人の男の子を加え、12人の男の子となります。ヤコブはこの後、神の使いと相撲を取り、勝利して、「イスラエル」(主は支配し給もう)という名が与えられます。イスラエル12部族の誕生の物語が、ハランでなされます。試練の中で与えられた神の恵みです。

 ヤコブはレアとの間に、ルベン、シメオン、レビ、ユダが与えられます。しかし、ラケルとの間には子どもが与えられません。ラケルは姉レアを妬みます。ラケルの召し使いビルハをヤコブの許に遣わします。その間に誕生したのが、ダン、ナフタリです。今度はレアが召し使いジルパをヤコブの許に遣わします。その間に誕生したのが、ガド、アシェルです。更に、ヤコブとレアとの間に、イッサカル、ゼブルン、そして女の子ディナが誕生します。そして漸く、ヤコブとラケルの間に、ヨセフが誕生しました。後に、ベニヤミンが誕生します。ヤコブの許に誕生した12人の男の子が、イスラエル12部族の基となります。ヤコブの逃亡生活の試練の中で、イスラエル12部族の基が誕生しました。

 

3.ヤコブの逃走

(1)30章25~43節。ヤコブは11人の男の子と1人の女の子が与えられ、ラバンに申し出ます。25節「私を去らせてください。私の故郷、私の生まれた地へ帰りたいのです。妻や子どもを私に与えて行かせてください」。しかし、ラバンはヤコブを手放したくはありません。ラケルとヤコブの騙し合い、知恵比べです。ラケルは答えます。27節「私はまじないをして、主が私を祝福されたのはお前のお陰なのだということが分かった。それで、もしお前さえよければ、とどまってほしいのだ。支払ってほしい報酬をはっきりと言いなさい。私は支払うつもりだ」。そこでヤコブは提案します。「あなたの羊の中で、ぶちとまだらの羊すべて、若い雄羊の中で黒みがかった小羊すべて、山羊の中でまだらとぶちのものすべてをいただきます」。しかし、ラバンはヤコブが要求したものを、その日の内に、息子たちの手に渡した。ヤコブは残された僅かな羊、山羊を基にして、群れを増やした。ヤコブは更に6年間働き、大変豊かになり、多くの羊の群れ、男女の奴隷、らくだとろばを持つようになった。試練の中で、財産を殖やした。

 

(2)31章1~21節。ヤコブはラバンの態度が以前のようでないことに気づいた。主はヤコブに言われた。3節「あなたの先祖の地、親族のもとに帰りなさい。私はあなたと共にいる」。ヤコブの思いではなく、主が「あなたの先祖の地、親族のもとに帰りなさい」と語られる。「私はあなたと共にいる」。天からの梯子が伸ばされた時に語られた主の言葉が再び語られる。ヤコブはレアとラケルに言います。5節「お父さんの態度を見ると、私に対して以前のようではない。しかし、私の父の神は私と共におられた。私が力の限りを尽くしてお父さんに仕えてきたことは、あなたがたがよく知っている。それなのに、お父さんは私をだまして、報酬を十回も変えた。しかし、神は私に害を加えることをお許しにならなかった」。12節「さあ、目を上げて見なさい。私はラバンがあなたにしたことをすべて知っている。あなたはベテルで柱に油を注ぎ、私に誓いを立てた。私はベテルの神である。今すぐこの地を出て、生まれ故郷に帰りなさい」。

 ヤコブはレア、ラケル、家畜を連れて故郷を目指し、ハランを旅立ちました。ヤコブの人生は旅の人生、逃亡の人生です。

 

(3)31章22~42節。三日後、ラバンはヤコブ一家が旅立ったことを知り、後を追いかけて行きます。ヤコブはラバンに、20年間のハランでの逃亡生活をこうまとめました。41節「この20年間、私はあなたの家で過ごしました。14年はあなたの二人の娘のために、6年はあなたの群れのために仕えました。それなのに、あなたは報酬を十回も変えたのです。もし、私の父の神、アブラハムの神、イサクの畏れる方が私に付いておられなかったなら、きっとあなたは何も持たせずに私を追い出したことでしょう。神は私の労苦と悩みを目にして、昨夜、あなたに注意されたのです」。20年間のハランの逃亡生活、試練の生活は、神の顧みの中にあった。それ故、耐えられた。

 31章43~54節。ラバンとヤコブは契約を結びます。ヤコブは石を取り、それを柱として立て、契約のしるしとしました。その地をミズパと呼んだ。「私たちがお互い目の届かない所にいるとしても、主が私とお前の間を見張ってくださるように」。ラバンは誓います。「アブラハムの神とナホルの神、彼らの先祖の神が私たちの間を正しく裁いてくださるように」。ナホルはラバンの祖父、アブラハムの弟です。ヤコブは父イサアクの畏れる方にかけて誓った。

 

4.苦難、忍耐、練達、希望

(1)ヤコブにとって叔父ラバンの許で過ごした20年間は試練の連続でした。騙して神の祝福を掴み取ったヤコブが、叔父ラバンに何度も騙されます。神が苦難の中で忍耐を与え、練達を与えました。ローマ書5章3~5節。練達は様々な試練を受けて、不純物が除かれ、純粋にされ、品格が築かれることです。神はヤコブを試練を通して練られ、神へ偽りにない信仰、品格へと導かれたのです。イスラエル12部族の頭とされました。20年間のハランでの逃亡生活は、神から与えられた鍛錬の時でした。

 

(2)ヘブライ12章4~13節。「『わが子よ。主の鍛錬を軽んじてはいけない。主によって懲らしめられても、弱り果ててはならない。主は愛する者を鍛え、子として受け入れる者を皆、鞭打たれるからである』。あなたがたは鍛錬として耐え忍びなさい。神は、あなたがたを子として扱っておられるのです」。

 

5.御言葉から祈りへ

(1)ブルームハルト『ゆうべの祈り』(加藤常昭訳) 10月14日の祈り 詩編85・9~10

「主よ、われらの神よ、われらがなしとげなければならないすべてのことにあって、あなたはわれらの助け、われらの慰め、われらのいのちです。われらは弱く貧しい者としてみまえに集まります。しかし、あなたのみ心であるものの中に、地上においてもあなたの義となるべきものの中に立ちうるようにと、あなたはわれらを豊かにし、いのちあるものとしてくださいます。われらが心にみ名をたたえて経験するすべてのことにあって、われらが霊においてひとつになるようにしてください。そして全世界の中へ、あなたの栄誉と、多くの人々の感謝がとどくようにしてください。あなたは助けであり、いっさいの禍いからの救いだからです。アーメン」。

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